第一章

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 トーマが始めにジョウから指示された事は、学校から出て西側に広がる町の探索だった。 「何か違和感を感じたら、足を止めてその場で教えてくれ」  こんな解かったような解からないようなことを言うジョウに一番違和感を感じながら、トーマは町を彼とともに歩き回った。  しかしながら、その違和感と言うものがまさしくその言葉の通りにしか表せないことを、この優秀な異能者の少年はすぐに知る事となる。 「ここに、何かを感じる」  そう言って立ち止まったトーマの目の前の空間には、ただの路地裏への分かれ道があるだけだ。  石畳が敷き詰められ、ところどころにゴミ箱やら花のプランター、使われないまま放置された角材が何本か隅に寝かせてある、何の変哲もない路地である。  だが、トーマはそこに異様な雰囲気を感じ取った。  眼に見えないけものみちがあるような、奇妙な感覚。  それは現世の秩序からやや逸脱した、がさがさと乱れた歪みだった。  ジョウは、そんなトーマの言葉を受けて、手にした町の地図上に落としていった。 「全部で11。さすがだな、トーマ」  町はずれのカフェに立ち寄り、オープンテラスのテーブル上に地図を広げてジョウは印を指でなぞった。 「この一ヶ月足らずで、この町から行方知れずになった人間が全部で11人。そして、その不明者が最後に目撃されたのが、ちょうどこの11か所付近なんだ」 「一ヶ月足らずで11人の行方不明者」  トーマは思わずジョウの言葉を繰り返した。  この異常な事件は、さきほど自分が感じ取った異様な空間と何か関係があるのだろうか。  これは思っていたより難解な仕事になるかもしれない、とトーマははっきりと自覚せざるを得なかった。
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