第一章

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 ジョウがトーマに手を伸ばし、握手をしたところで、これまたクラスメートのシンラがこちらへと駆けてきた。 「ジョウ、こんなところでサボって」  さぼってねえよ、と口をとがらせジョウは反論した。 「強力な助っ人をゲットしてたところだぜ」  ジョウと握手をしているトーマを見て、シンラは眼を丸くした。  上級クラス主席のトーマが手助けしてくれるなんて!  ジョウは 一体どんな手を使って彼の懐柔に成功したのか。 「トーマ、大丈夫なのか。ジョウに何か弱みでも握られたのか?」 「安心したまえ、シンラ。私に弱みなどない」  それより、とトーマは顎に軽く手を当てた。 「ジョウとシンラ。上級クラスの生徒ふたりがかりの課題とは。そんなにやっかいなのかね」 「うん。やっかいではある」  シンラが同じように顎に手を当てようとした時、糸杉の丘のふもとから呼びかける声が響いてきた。 「ジョウ~。シンラ~。大変、大変~」  その声を聞いて、ジョウとシンラは顎ではなく額に手を当てた。  やれやれと首を振り、大袈裟に溜息までついた。 「あれがやっかいの元だ」  全然大変そうでない様子で、にこにこと丘を駆け上ってくるレナの姿に、トーマは頷いた。 「15歳になったというのに、相変わらずだな。彼女は」  ドジッ子のレナは、二人をサポートするつもりで逆に振り回しているのだろう。  これは確かにやっかいだ。  しかし、特上の松で引き受けてしまったからには仕方がない。 「全力を尽くそうではないか」    それは二人に言ったのか、自分に言い聞かせたのか、どちらともとれるトーマの言葉だった。
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