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ジョウがトーマに手を伸ばし、握手をしたところで、これまたクラスメートのシンラがこちらへと駆けてきた。
「ジョウ、こんなところでサボって」
さぼってねえよ、と口をとがらせジョウは反論した。
「強力な助っ人をゲットしてたところだぜ」
ジョウと握手をしているトーマを見て、シンラは眼を丸くした。
上級クラス主席のトーマが手助けしてくれるなんて!
ジョウは 一体どんな手を使って彼の懐柔に成功したのか。
「トーマ、大丈夫なのか。ジョウに何か弱みでも握られたのか?」
「安心したまえ、シンラ。私に弱みなどない」
それより、とトーマは顎に軽く手を当てた。
「ジョウとシンラ。上級クラスの生徒ふたりがかりの課題とは。そんなにやっかいなのかね」
「うん。やっかいではある」
シンラが同じように顎に手を当てようとした時、糸杉の丘のふもとから呼びかける声が響いてきた。
「ジョウ~。シンラ~。大変、大変~」
その声を聞いて、ジョウとシンラは顎ではなく額に手を当てた。
やれやれと首を振り、大袈裟に溜息までついた。
「あれがやっかいの元だ」
全然大変そうでない様子で、にこにこと丘を駆け上ってくるレナの姿に、トーマは頷いた。
「15歳になったというのに、相変わらずだな。彼女は」
ドジッ子のレナは、二人をサポートするつもりで逆に振り回しているのだろう。
これは確かにやっかいだ。
しかし、特上の松で引き受けてしまったからには仕方がない。
「全力を尽くそうではないか」
それは二人に言ったのか、自分に言い聞かせたのか、どちらともとれるトーマの言葉だった。
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