第一章

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 トーマはクリームソーダをひとくち飲んでから、ペンで額をぽりぽり掻いているジョウに問いかけた。 「しかしだよ」 「ん?」 「確かに一ヶ月足らずで11人もの行方不明者は異常だ。猟奇な事件には違いあるまい」 「ああ」 「しかし、こういったことは地元の警察に任せておくのがよいのではないのかな。いくら上級異能者とはいえ、我々はまだ未成年の学生。首を突っ込む仕事ではないのでは」  それがそうもいかない事態になった、とジョウは眉間にしわを寄せた。  行方不明者の中に初級クラスの生徒の家族がおり、これは神隠しに違いないから異能力で探し出して欲しい、と先生が泣きつかれたという。 「それが日頃からたっぷり寄付金を払ってくれる上得意様でな。無視するわけにもいかねえから、って小手調べに生徒を何名か見廻りに出してたらしいんだよ」  ところがだ、とジョウは眉間のしわをさらに深くして続けた。 「今度はその見廻りをしてた生徒が一人、行方不明になっちまったんだよ。しかも中級がだ」 「何だって」  中級クラスとはいえ訓練を受けた立派な異能者だ。それをかどわかしていく相手とは尋常ではない。 「それから、さっきチェックして廻った場所なんだけどな。実を言うとオレも前もって眼ぇつけてた所なんだよ。どんな感じがした?」 「なにやら、今私たちが居るこの空間とは違う気配を感じたが。君はどう思う?」 「あれは冥界への通り道ができた跡だ。まず間違いねぇ」  その言葉に、トーマはジョウと同じように眉間にしわを作ることとなった。  ジョウは強力なサイコキネシスと霊感の持ち主だ。  普段から冥界になじんでいるジョウの言うことならば、これは確実だろう。 「先生には報告したのかね」 「したさ。その結果、オレに解決してみせろって言って来たんだよ。冥界と聞いたらすぐオレだ。仕方ねえけどな」 「ジョウは解かるが、なぜシンラまで」 「そいつぁアレだ。手伝わせてるんだよ。人手は多いほうが助かるからな」  トーマは、先だってのシンラの言葉を思い出した。 『トーマ、大丈夫なのか。ジョウに何か弱みでも握られたのか?』  気の毒に、彼は何か弱みを握られたに違いない。  しかしながら、相手が冥界となると誰かの助けは確かに必要だろう。シンラ、そして自分も駆り出したジョウの用心深さは評価すべきだ。
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