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「ふむ。やはり冥界の魔族の仕業かな」
「いや。そうじゃねえみたいなんだよな。オレの友達、心当たりはねえ、って言ってたし」
「友達?」
まさかとは思ったが、トーマは訊ねずにはいられなかった。
「友達って、君まさか冥界に、魔族に友人がいるのかね!?」
「いるけど」
次の瞬間、平然と答えたジョウの手首をトーマが力任せに捻りあげた。
「ちょっと待て! てめえ、突然なにしやがる!?」
「冥界と通じているとあらば仕方あるまい! 生徒指導の先生へ引き渡す。なんならこの手であの世へ送ってやってもよいぞ!」
そこへフルーツパフェが運ばれてきた。季節の果物がふんだんに乗せられた、この店自慢のメニューだ。
「ふむ。食べてからにしよう」
「オレの命はパフェにも劣るかよ……」
上機嫌でパフェをぱくつくトーマに、ジョウは冥界に友人はいるが取り立てて問題視することではないと説得にあたった。
「敵国でも、開戦していなければ個人同士の付き合いを問われる筋合いはないだろ?」
「ふむ」
「ダチ、っつっても、モクふかしながら世間話をするだけだ」
「ほう」
「ほんのたまに、一緒に飲んだりする程度だっての」
「なるほど」
もぐもぐもぐもぐ……。
「あぁ。美味しかった」
「そいつは良うございました。で、解かってくれたかな? オレの言い分は」
「ひとつ隠していることがあるな。君」
「何も隠しちゃあいねえって」
「その友人とは、大変美しい女性だったりしないかね?」
「勘繰るなよ。馬鹿」
「冥界にまでガールフレンドがいたとは。さすがの俺もあきれたぞ。ジョウ」
「シンラ! いつの間に!?」
「ねぇ。今度紹介してよね♪」
「レナ!?」
勢ぞろいした面々を前に、トーマはにっこりと微笑んだ。
「では、今度はプディングをもらおうかな。シンラとレナは何を?」
「私も季節のパフェが食べたい」
「じゃあ俺はベイクドチーズケーキとエスプレッソ」
待て待て待て、とジョウは慌てた。
「何だッてんだお前ら。全部オレのおごりか!?」
これは口止め料だ、とトーマは声をひそめた。
「冥界に彼女がいる、などということが学校、政府に知れたらどうするのだね。クラス剥奪、退学の上、矯正施設行きだ。観念したまえ」
あぁ、とジョウは天を仰いだ。じきに傾き始める気配の太陽が、薄雲に隠れそうだった。
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