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【18歳】
夏休み前なのに蝉がうるさい。
窓際の席だから、少し風が入るのはいいけど。
前の席には、麻由宇の背中がある。
白いブラウスの下にシャツを着てないから、ブラジャーの線が見える。クロスしたラインが涙型の空間を作っている。
高三にもなってスポーツブラすんなよ。色気ねえなあ。
そんなことを考えながら、麻由宇の背中の雫型に触れたい気もしている。
どっちなんだろう。
俺は触れたいのか、触れたくないのか。
「えー!うそ、今日?」
麻由宇が叫んで、椅子をガタッと言わせて立ち上がった。詩織がバカ笑いをする。
「またかよ、忘れ物大王だな」
そう言った詩織を押して、麻由宇が走って行った。
またかよ。
夏休み前なのに蝉がうるさい。
こんな夏が昔あった。
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