3章

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破裂しそうな心臓を抑えながら目の前の少女を観察する。 その時、彼の視線はその異質な少女の顔面に注がれていたたため気づくのが遅れた。小さな少女をその手を伸ばし、青と白を基調とした全国チェーンのコンビニ制服の裾をそっと掴んでいたことに。 「―――――――ッ??」 声にならない悲鳴を漏らし弾かれた様に後ずさる、が背後には開かない自動ドアがありそこに背中をぶつける形で彼の退避行動は止まるはずだった。 「――――って、あれ? ドアが開いて…………」 軽い駆動音が静寂な店内に響く。即座に反応した松野は、ドアが開き切るのも待たず僅かに出来た隙間に頭から突っ込んだ。一目散に店の外へと逃れ、ある程度離れた所で恐る恐る振り返る。 「はぁはぁ。よ、良し、追って来てはねえみたいだな」 依然少女は一切の明かりの無いコンビニの店内で佇んでいた。 そこで初めて周囲を見回すほどの余裕が生まれたのかゆっくりと首を動かし辺りに目を配る。 「道も…………ちゃんとあるし、遠くに街明かりも見える。空には月も浮かんでる…………あのコンビニの中から見た景色だけが可笑しな事になっていたって訳か」 異常な空間から日常的な空間へ戻ってきたという安堵により松野はその場に崩れ落ちるように腰を下ろす。もう一度振り返ってコンビニの方を見てみると自動ドアは閉まり明かりの無い店内の様子は視認できなかった。バクバクと激しい動悸が松野を襲う。目を瞑り、大きく深呼吸を繰り返す内に好き放題暴れていた心臓も大人しくなり彼自身も落ち着きを取り戻し始めていた。そこに――――
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