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「…………あのー、大丈夫?」
突然耳元から聞こえた人の声にびくりと肩を震わせる松野。
慌てて顔をあげるとそこには一人の女が立っていた。
年齢は二〇代後半だろうか、派手な化粧と明るい金髪を盛りに盛った髪型から夜の繁華街帰りだろうと推測できる。
「あ、えっと―――――だ、大丈夫…………す」
まさか人が通りかかるとは思っていなかった松野は未だ僅かに震えの残る足に力を込め立ち上がる。
「ほんとに大丈夫? 顔も青いしなんか震えてない? もしかして酔ってる?」
赤いドレスの様な露出度高めの恰好をした女は高めのヒールを履いているのかそれなりに身長のある松野と同じ目線から問いかけてくる。
「いや、酔ってるわけじゃ、ないんすけど…………」
普通の人間と会話する、そんな当たり前の出来事を何年も昔のことの様に感じた松野の瞳が本人の意思とは裏腹に滲み始める。
目の前で金髪の如何にもと言った風体のヤンキーが突然目に涙を浮かべるのを見て今度は女が驚いた。
「ちょっとちょっとあたし何か悪い事言った!? 男の子のガチ泣きなんてどう対処すればいいのよ??」
「こんな話、信じて貰えないかも知んないですけど…………」
そう前置きしてから、先ほどコンビニの店内で起こった事を全て話した。
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