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「……………………暇だ」
ぱたん、と読み終えた週刊誌を閉じカウンターの上に置く。その隣にはここ一時間で読破した他の出版社の雑誌が山の様に積まれていた。
「確かに深夜のコンビニバイトは楽そうだからってここを選んだのは俺だけど…………。ここまで暇だと逆に苦痛になるっつの」
誰もが知ってる全国チェーンのコンビニエンスストア。看板や店の外装と同じ青と白をメインカラーとした制服を身に着けた金髪の男。少年と呼ぶ程幼くは無いが青年と呼ぶには少々落ち着きに欠けそうな外見、簡単に言えば酒やタバコを買う時に年齢確認をされるかされないか、といった年の頃。制服の胸元には『松野』と書かれた名刺サイズのプレートがつけられている。
「出勤してからかれこれ2時間経つけどまじで一人も客が来ねえ。つーか店の前を人が通らねえ、大通りから一本逸れるだけでこんなに人気が減るもんなのな」
現在時刻は午前二時。世間では丑三つ時とも呼ばれる時間、たとえ大通りであっても滅多に人が出歩くことは無い時間だが、それを差し引いてもこの店周辺に人気が無い。街灯と月明りに照らされた店前の通りを歩く人影は全くといっていいほど見られない。
「シフトに入って一日目、軽い説明を受けただけでまさか初日っから一人で店番を任されるとは思ってなかったけど、この状況を考えればなんとなく理解出来るわ。別に初めてのバイトって訳でもねえし、マニュアルも預かってるしでもし客が来ても何とかなるだろうとは思ってるけど」
特に不安や緊張といったものは感じられない。が、こうして誰もいない店内で独り言をもらす程度には落ち着かない何かを感じているのか。
「そういや、なんか店長が言ってたなぁ。この店の深夜勤務の従業員は長続きしないって話とその理由」
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