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天井の蛍光灯は勿論、レジ横に備え付けられたコロッケやからあげが並べられた保温ケース、飲料コーナーの冷蔵庫の稼働状況を知らせるランプ、果ては店の入り口上部に設置された捕虫用蛍光ランプまで店内で光源となり得る物全てからその光が失われていた。
「なん――――だよ、これ――――っ!?」
確かに。松野自身、怪談話が苦手だという自覚はある。以前、親友と二人、地元の不良グループ一〇〇人に囲まれた時でも臆せず正面から立ち向かいその全員をまとめて叩きのめした経験のある彼でも怖い物はある。殴れない物は怖い、理由自体はありふれたものだがそれが彼を臆病者と決めつける事にはならない。実際、二十歳を目前とする彼も停電の一度や二度はもちろん経験しており、その度にこれほどまでに冷静さを失いパニックを露にしてきた訳ではない。
それが唯の停電であるならば、の話だが。
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