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聖美と真知代
私は人を殺した――
暗闇の中、横たわる男の身体を月明かりと、街灯の明かりが、薄っすらと照らし出す。
その死体を呆然と佇み見下ろす私。
――良かった、良かったんだ。これで......
自分自身に言い聞かすと、死体はつま先からスーッと半透目になりながら、やがて完全に消えた。
辰巳龍矢の存在を消去――
夏の終わりにはまだ早いこの時期に、冷たい風が頬を撫でる。
カツンッ、とハイヒールの音が響いた――
次の日の朝、いつも通り登校してきた聖美を教室に入る前に引き止めた。
「聖美、辰巳龍矢って男の事なんだけど......」
「え? 誰、それ?」
――やはり昨日の夜で、聖美の彼氏であるあの女好き最低男の存在は消えていた。
人を一人消した、文字通り消去した罪悪感と、聖美の記憶からあの男がいなくなってくれた安心感が、入り混ざる複雑な心境の中、私は胸をなでおろした。
白石聖美、私と同じ間地久高校に通う十七歳、
幼い頃から容姿端麗、大きな目に長いまつ毛、綺麗に通った鼻筋に潤った唇。
少し明るめの艶やかな髪は、制服を着崩した華奢な聖美によく似合う。
まぁ、そんな彼女をクラスの男子ならず、バイト先の男も放ってはおかなかった。
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