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「気が散るから黙ってやってくれ」
ほらもう、真野さんにも睨まれるし。
なんで私が怒られるんだよと言いたい気持ちを堪え、今次さんの元から書類を回収して再び積み上げる。
音にするとドンって感じ。まだまだ先は長い。
「小雪ちゃんはおもちゃどこで買う派?店?ネット?」
「イラッ」
「口で言った!アハハハ」
あー殺したい。もうヒットマンを待たずともこの手で殺ってやろうか。
物騒な思考に偏っていく自分を落ち着かせたくとも、ムカつくほどキラキラと覗き込む笑顔がそれを邪魔する。
「今真野さんに言われたばかりでしょ、話しかけないでくださいよ」
「別に仕事の話題なら良いじゃん。編集者はどこがおススメか~の意見大事っすよね、まーのさん!」
こ、この男~!!指が滑った振りしてお前の秘孔ついてやろーか!
文字を打つ手を止め、今次さんの息の根を止める方に移行しかけた私を見かねたのか、梶浦さんが苦笑しながら「今次はどこが良いと思うのさ」と問いかけた。
さすが気遣いの出来る男、通常時の梶浦さんはやはり頼りになる。
「俺はやっぱ店かな~。ネットって外れも多い気がする。評価高すぎもサクラの可能性あるしさ」
「ああ、その意見意外と多かったね。思ったのと違うとか」
「服や靴と同じで、使用感は人それぞれだもん。まず手に取ってみないとっすよね~」
狙い通り今次さんは椅子の向きをくるっと変え、そのままカラカラと梶浦さんの元へと進んでいった。
よしよし、そのまま相手しててくれ。
今の梶浦さんは保護者モード、幼稚園児の世話などたやすいはず・・・
「でも今返金保証ついてるとこもあるんだよ」
「えっ、こういうのでも?」
しまった――予想外の情報に思わず反応するなんて、私としたことが。
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