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思わず食いついて見上げてしまった先で、今次さんがこっちに戻ってくる準備をしている。
それをかいくぐって梶浦さんに問いかけた。
「衛生商品みたいなものですよね、肌に直に当てるんだし」
「もちろん機械類は駄目だけど、ローションや媚薬とかなら、一回使って肌に合わなければ返品出来るって。これやってんのはうちの提携会社だけどね」
「なるほど、試しやすさは増しますね」
大手の化粧品会社やCM広告出してる企業ならまだしも、アダルトグッズの通販でそんな保証がついてるとは。
やっぱり時代は変化しつつある、そして女性が手を出しやすくなる秘訣もこういった配慮からなのかな・・・
と納得する間に、隣に今次さんが戻って来てしまった。
「小雪ちゃんが買ってるとこにはそういうサービス無いの?」
「なんで購入経験前提になってるんですか。お店でもネットでも、そういうのは一度も買ってません!」
これ以上無駄話を広げられたら、本当に間に合わなくなる。
真野さんの眉間のしわも深くなってきた気がするし、きっぱり断ち切って作業に集中しようと声を張って答えた。
直後、しーんとした空気が私を取り囲む。
えっ、何この『何言ってんだお前』的な雰囲気。
「買ったことないの?」
「な、ないですよ。何度も言いますけどアンダーハートに来るまでこういうものに縁も興味もなかったんですからね」
そりゃ、どういう種類のグッズがあるのかっていう基礎的な知識ぐらいは持ってたけど。
実際目にしたのも、使ったのだってここ最近が初めて・・・しかも無理やりだし。
そう言った意味を込めて奥にいた東雲さんをジト目で見たつもりだった。
それが間違いだと気づいたのは、頬杖をついた彼が私に目を合わせ、ニッと笑った時だった。
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