ブラックオフィスレディ 【R-18】  ep.8

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「ご挨拶にはいずれ窺わせて頂くとして、見て下さいよこのデータの山!とにかく今日はこれを片づけないと」 かといって、下手に取り乱して地雷を踏むなんてもってのほかだ。 その手に乗るかといいたい気持ちをぐっと堪え、パソコンを指さしながら東雲さんと向き合った。 あくまで仕事上の割り振りを用いて逃げ道へと辿りつこう。 頭の中で駆け引きを考えながら切り出したその時、ポンポンッと、場に似つかわしくない優しいリズムで背中を叩かれた。 振り向くと梶浦さんが、身を乗り出して私を見つめていた。 穏やかで慈悲深く、そしてどうにもならない憐れみを湛えた菩薩のような表情で。 「続きは俺がやるから、連れてもらっておいでよ」 ごめん、俺にはこれしかできない。 そう謝罪する梶浦さんの心の内が手に取るようにわかる。 それほど、背後で私たちを射抜く真野さんの眼力はすごかった。 コラムのために取材に行くということ。 仕事人間の彼の前で、それを拒否する勇気などあるわけがない。 「いいなあ!俺も行きたい行きたい」 「今次は午後取材だろ」 「そーだった、愛実ちゃんとお店に来たカップルごっこしよ」 前方には鬼神のごとき上司、間に菩薩と馬鹿を挟んで後方に悪の根源ともいえる変態。 どこへ向かって走って行っても、望まない未来しかないのは同じこと。 「じゃあ早速行こうか。小見さん」 これはいっそ、いずれ来たる勝利と慰謝料を掴む日、それに向け与えられた試練だと思って頑張るしかない。 でも、ニッコリと得体の知れない(いや、ある意味知れてる)笑みを浮かべる東雲さんを見る限り、証言台へ立つより先に鉄格子の向こう側へ行く羽目になりそうだ。
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