第九話 エリスの想い ①

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マキがユイを論したところで、部屋は沈黙に包まれた。 エリスの力の正体が錬金術だとして……その代価として生命力を使ってきたのならば……。 これまでにどれ程の人の傷を治し……どれ程の生命力を使ってきたのか……。 「アレルガルド……」 沈黙を破ったのは、当のエリスだった。 エリスは大バァに言った。 「大バァ様……。アレルガルドって知ってますか?」 エリスの力の正体と関わっているであろう、アレルガルド……。 エリスの旅の目的地であり、失われた国とされているアレルガルド……。 エリスの言葉に大バァの表情は僅かに変化した。 「アレルガルド……お主、どこでそれを知った?」 エリスは目を見開いた。 「知ってるのっ!?」 「知っている……とは言えんのぉ……」 するとロックが言った。 「バァさん……知っている口ぶりだったじゃねぇかっ……」 「名を知っておる程度じゃ……。それだけでは……知っておるとは、言えんのぉ……」 ロックは大バァに食い下がった。 「何で名前を知ってんだ?」 大バァはしわくちゃの細い目でロックを見据えた。 「昔話じゃ……千年前に栄えた国……」 エリスは目を見開き呟いた。 「千年前……」 大バァは続けた。 「しかしアレルガルドは、突如消えたとされておる」 今度はジンの表情が険しくなった。 「消えた?……国が?」 「昔話じゃからのぉ……。それに儂は千年も生きとらんて……」 千年前……いやそれ以前に、栄えていた国が突如消える……物理的にあり得ないが……。 「それはどこにあるっ?」 そう言ったロックに、大バァは首を横に振った。 「最初に言ったはずじゃ……名を知っておる程度だと……。どこかもわからんし、アレルガルドが存在したかどうかもわからん。昔話じゃからな……」
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