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マキがユイを論したところで、部屋は沈黙に包まれた。
エリスの力の正体が錬金術だとして……その代価として生命力を使ってきたのならば……。
これまでにどれ程の人の傷を治し……どれ程の生命力を使ってきたのか……。
「アレルガルド……」
沈黙を破ったのは、当のエリスだった。
エリスは大バァに言った。
「大バァ様……。アレルガルドって知ってますか?」
エリスの力の正体と関わっているであろう、アレルガルド……。
エリスの旅の目的地であり、失われた国とされているアレルガルド……。
エリスの言葉に大バァの表情は僅かに変化した。
「アレルガルド……お主、どこでそれを知った?」
エリスは目を見開いた。
「知ってるのっ!?」
「知っている……とは言えんのぉ……」
するとロックが言った。
「バァさん……知っている口ぶりだったじゃねぇかっ……」
「名を知っておる程度じゃ……。それだけでは……知っておるとは、言えんのぉ……」
ロックは大バァに食い下がった。
「何で名前を知ってんだ?」
大バァはしわくちゃの細い目でロックを見据えた。
「昔話じゃ……千年前に栄えた国……」
エリスは目を見開き呟いた。
「千年前……」
大バァは続けた。
「しかしアレルガルドは、突如消えたとされておる」
今度はジンの表情が険しくなった。
「消えた?……国が?」
「昔話じゃからのぉ……。それに儂は千年も生きとらんて……」
千年前……いやそれ以前に、栄えていた国が突如消える……物理的にあり得ないが……。
「それはどこにあるっ?」
そう言ったロックに、大バァは首を横に振った。
「最初に言ったはずじゃ……名を知っておる程度だと……。どこかもわからんし、アレルガルドが存在したかどうかもわからん。昔話じゃからな……」
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