第一章 別れる世界

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「別に転生する気はないのだ……」 「――わかった、わかった! 妾も初回の審判じゃし、冥府法特例規定に乗っ取り、お前の先々を手助けする。しかもお前の功績ではこの閻魔たる妾が直々にである。シトは幸せ者じゃな」 「――いや、待ってくれるか? 勝手に話が進んでいるのだが……」 「おお~安心せい。また、子供からやり直す事はないぞ? 特例事項第三条、英霊肉体保護に関する規定を使い、もう少し可愛いげのある身体にしておいてやる」  まず人の話を聞いてくれ。そんな願いを痛烈に表情で表すシトに対して、閻魔は気楽に話をほいほい進める。しかも、勝手に身体をどうにかするか言っており、意味がわからない。 「普通は赤子から転生するのではないか?」 「そのタイプの転生もある。それ以外、極楽浄土や地獄廻りもあるが、妖魔を倒す者共は特別な報酬があるのじゃ。赤子で言えば、シトよ。どうせなら、女となるか?」 「……それは勘弁してくれ」 「男が良いのだな。ならば、ラミエル殿にも手続きを助けて貰うか」 「……」  ラミエルと言えば天使と呼ばれる存在。そのような名前が出てくれば、此処が本当に死後の世界なのか、何やら怪しさすら思えて来た。 「――よし、判決を言い渡す! 神爪司斗よ。汝の人生において、人命救出、ニ百三十七名、妖魔討伐百十七体と現世に貢献した功績を考慮し、他世界蘇生にて第二の人生謳歌を命じる! 慎ましく受け取り励むが良い」 「……は? なんだ……それは……」 「また、冥府特例法に乗っ取り、お前の記憶知識はそのままとし、方術使用も可能とする。他にも生活に困らぬ様に、閻魔たる妾が、お前の手助けを行うので、喜ぶがよい。それと仙人迄のチカラは無いので、生活には注意するのじゃ」  自信面々、本当に満ちた口調は、これ以上のサービスはないぞ。そんな気配に加え、何気うっすら笑みを浮かべている。それが無邪気にも見えて、少し可愛い思えたシトは、少しため息を吐いた。
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