第一章 別れる世界

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「閻魔じゃ、閻魔! どうじゃ? 行く気になったか? して、どの世界にする??」  シトは思う。もし、彼女が閻魔ならば、判決を言い渡し勝手に送り付ければ良いのでないのか? それなのに、此方の意見を尊重するのは、やはり生前の功績が関与しているか。  ただ、どちらにせ、今回の……地球で生まれ学んだ感情と言えば、妖魔を退治する術と感情のみ。  敵を……人間に仇なす存在をひたすらに消滅させ続けた十七年間。尽きぬ復讐心だけを糧に存在して来た。だからこそ、第二の人生を歩めと言われても、正直何をすればいいものか。  それこそ、妖魔を倒すばかりのチカラを持つのだ。そんな人物がまともな人生を再び与えられ、生活出来るものか。 「……悩んでも仕方ないなら、判決通りで……まあ、俺の人生が面倒じゃない場所なら何処でもいいか」 「――うむ! 良い返事じゃ! ならばシトは……そうそう、この魔法世界レボルーヌでどうじゃ?」  どうじゃと言われても、魔法の魔の字も知らないとなれば、何も言い返せないので「任せる」と答えれば、閻魔は薄く笑った。 「うむ、此処は天界の者が管轄じゃが、天界に向かう英霊が幾度か転生させておるが一向に情勢が変わらぬらしいからのう。して、冥府にも依頼がかかっておったが、あまり気にせずお前のやりたい様にやると良い」 「……」  既に他の英霊……つまり、それ相応の能力者が向かっていたが、変化が無いと聞かされ、どんな心境か。この閻魔はきっと、色々な意味で残念な気がしてきた。  口調からすれば威厳がありそうで、容姿は良いが……何かズレている気がする。 それでも、自分には選択権が無さそうなので心でひっそり呟く。 「そうと決まれば早速移動の準備を行う! 年齢は……うむ、十分若いが、少しだけ若くしておくぞ? 可愛げが足りんから……十五にする。それと容姿は……少し可愛くするか。他に何か希望あるか?」 「可愛げ……十五にしても良いが筋力とか神通力を減らして貰っては困る。それと、あっちで生活するに当たり、金銭と言語をどうにかして欲しい」 「ディアボロスを倒せる退魔能力あれば十分な気もするが、冥府からの代表者じゃからな~お前の魂にはそもそも伸びしろがある。その辺も考慮してやるわい」  閻魔帳を開き、何やら呪文も呟き始める閻魔に合わせ、シトの周りが輝きを帯始めて内部から溢れるチカラを感じる。
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