第二章 異世界と自分の価値観

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        ▽  太陽の日差しが眩しく、光を燦々と放つ割には、暑くもない。それは春の季節に程近く、風が吹き抜けると草木の緑を嗅覚でも感じ取れる。  そんな草原がある一角に、木々が並ぶ場所があり、太陽の光を程よく遮るっていた。その木の根元では…… 「……くっぅ……ぅぅ……」  頭痛に近いのその感覚が、弱々しい声と共に言葉となり、ゆっくりと目を開ける。ぼんやり映る瞳には、急な光がやけに眩しく、一度閉じてしまうが……直ぐに疑問が生まれる。  気のせいか? 一瞬だけだが、人の姿が見えた気がするのだ。  まだ、ぼんやりしているか。そう、思いつつ、目を再び開けと……うん、やはり人が見えて、自然と目が離せない。 「あっ……起きましたか。何処か痛む所はありませんか?」  それは優しく包み込まれる様な女性の声。そして、見た事も無い位に綺麗な人であり、その姿に驚きもあった。髪の色が透き通るかと思える水色で、さらさらと背中までありそうだ。瞳の色もまた同じであり、一見、妖精かと思え、見とれてしまうが…… 「――っと! す、すみません!」  気付いたのは、彼女が見える位置関係。やけに近くで見下ろされるその距離感と頭部の柔らかい感覚は、膝枕されていのだ。とてもじなゃないが、そんな事された試しもないだけに慌てて飛び上がる。 「行けません! あまり、急に身体を動かすと危ないです」  そう言った彼女は、直ぐに立ち上がり、此方の身体を気遣う。 「いや……大丈夫だから。それより……君は……」  立ち上がる彼女を見て見れば、背丈は同じ位と思えるが、その服装が妙に可愛いゴズロリと呼ばれるドレスなのだ。しかしながら、上半身が黒主体の和風要素があり、振り袖がある。それを締める大きめ帯、短めの黒いスカートと白い肌を隠す黒色ニーソは、清楚な彼女を何やら引き立てる。 「す、すみません。シト様に勝手に膝枕……してしまい……そのすみませんでした」  しおらしく直ぐに頭を下げる彼女に、逆に此方が困り果てて、思わず言葉を続けられない。 604587de-0494-4f76-a6ae-a9be4d67d42c
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