第二章 異世界と自分の価値観

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「その……いかがでしょうか?」 「これは……魔法ですか?」 「はい。この世界にあるチカラです。シト様は生前、退魔師とお聞きしましたので、そのイメージ致しましたが、お嫌いでしたか?」 「嫌い言うよりは、此方の世界では浮いてないか?」 「大丈夫です。此方の世界は、地球に似た文化の服装もありますので、ご安心下さい」 「閻さんは此方の世界について詳しいのですか?」 「ええ、シト様のお役立てる程の知識は有していますので、是非お供の方を許可願いたいのです」  服装を仕立て上げた時からこの場面まで本当に心配そうに此方の気遣いするその姿は、奴隷と言うかメイドと言うか……職に飢えたニートとも言えるかも知れない。  ただ、興味を抱くのは、魔法と呼ばれる異世界の術式と、やはり知識。これは、状況を説明してくれる人が居るか居ないかで、行動範囲に影響が出る。  しかし、奴隷と言うフレーズが嫌だと思えば眉間にシワを寄せて考え…… 「閻さん、俺は奴隷とか嫌なんですが、協力者として同行してくれるのであれば助かります」 「――協力者など、とんでもありません。わたしはシト様の所有物です。あなたの生活に関わる全てを全身全霊を持ってサポート致します」 「全身全霊って……あなたは奴隷でも家畜でもないですから」 「いえ、わたしには勿体無いお言葉! シト様が願うのであれば……わ、わたしは……この身の全てを捧げる覚悟は出来ております」  顔を赤く染めながら、片膝を地につけ、まるで王様の前で行う行為に、閻魔の奴はどんな事を吹き込んだのだろうと、たじたじになってしまう。 「……奴隷でもなく、家畜でもなく、俺を助けてくれるなら着いて来て下さい。それが条件でどうですか?」 「で、では、シト様は、わたしの事は奴隷と思わないで下さい。閻魔様命に従い、わたしは全力でシト様をサポート致しますので、何なりとお申し付け下さい」  頭を下げたまま、そうは言われるが、女性にこんなの事されて嬉しいかと言われれば、非常に気まずい。これが閻魔の言う、サポートの一つなのであろうが、もう少しやり方的にどうにかならなかったのかと、肩を落としてしまう。
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