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闇夜の片隅で起きる閃光が、激しさを増す。夜も深いこの時間、ネオンの輝きを隠す建物の影では、一人の少年が闘いの最中である。
黒い制服に身を包む彼の片手にあるのは、銃と呼ばれる武器に、札と呼ばれる退魔道具。それは接近する――敵に合わせ殴る様に、振り抜く。
風を切り裂く一撃であるが、俊敏な敵は、剣を使い弾き返す。その際に生まれる火花が閃光にも見えるのだ。
「……くっ……まずったか……」
戦闘を開始して、早くも一時間は過ぎたかも知れないが、確認する余力も無い。敵もそれは同じなはず。此方の攻撃を幾度も当てたのもあり、それ相応に負傷は負わせられた。
あと一息のところでまで来たが……自身の負傷も同格かも知れない。肩と脇腹からの負傷により、黒い制服が赤い血液で滲み、意識こそ保つが身体にチカラが入らなくなってきた。
次の一撃が雌雄を決する。きっと……いや、そうで無ければ此方が敗北するであろう。それほどに身体にも余力が無い現状に、覚悟を決めた。
この悪魔と呼ばれた異形の正体は、自身が生涯賭けて追いかけた相手。それこそ、生きる為にこの闘うチカラを高め――今日この日まで費やした。
奴を倒せるなら……此処で果てても良い。だからこそ、五感を研ぎ澄ませる。持てるチカラを使い、奴の弱点である核の位置を撃ち抜く事に集中する。
姿こそ人に近い異形は全身が黒い皮膚を持ち、翼を持つ者。角と尻尾を持つそれは――高い知能と狡猾な話術を使い、人の世界を陰から操り命を弄ぶ、この世界のまさに“闇”だ。
だからこそ――命を捨てでも、その存在を消す必要がある。
空気が一瞬、それは僅かな流れが変化を見せた。これは仕掛ける合図か。己の勘が告げる。此処で勝負を決めなければ――ならない。
意を決し、隠れたビルの隙間から飛び出すと、奴は月を背に、空を飛んでいた。悠々とするが、黒き皮膚から流れらる緑色の液体が、負傷を語っていた。
「……人間の分際で……我に此処まで傷を負わせるとは……」
「……その人間に……敗北しろ」
片手にする銃を構え、空へと標準を構える。距離はあるが故に、此処から仕掛けて届かない。相手の弱点へ攻撃を叩き込むには、接近するしかない。
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