第二章 異世界と自分の価値観

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 閻の話では、この世界には魔法四属性を司る神殿とそれに仕える巫女が居るそうだ。巫女同士は決して争いを望まず、自分が属する神殿に仕え、世界の平和と秩序を守る守護者と言える。  この数百年、レボルーヌの巫女は争いには参加せず、時に人々を守り、人が間違わない道筋を示す存在でもあった。故に、四大巫女(よんだいみこ)にはどの国も政治的、戦略的に利用する者などいなかったのだか…… 「その四大巫女を利用した者が出て来たのですか?」 「はい、四大巫女が各国で行方不明になっており、各国情勢が崩れかけております」 「行方不明って……その巫女は特別なチカラとか無かったのか?」 「勿論、四大巫女はその加護を受けており、膨大なチカラを有しておりました。それもあって、その巫女に危害を企てる考えを持つ者はいませんでした」 「そんな存在に仕掛けるとは、なかなかの大した者が居るもんだ」  口にしながら、少しだけ疑問を抱く。その存在が問題を引き起こしている現状、この世界に安心はあるのか。各国が戦を起こす場面になっているならば、のんびりするならば、遠い地に行くべきなのか。 「……考えても仕方ない……か。閻さん? 俺はそれをどうにかしないとなりませんか?」  一応、確認してみる。何せ、閻魔は好きにして良いとは言えど、こんな状況を聞かされれば、良識ある感情が僅からながら反応する。 「わたしのご命令は、シト様がこの世界で自由に行動する事を支援するだけです。思うがまま、お好きに行動して下さい」  此処でもにっこり微笑む。その表情は愛らしく、ついつい見惚れるが、別に強要するつもりはないようだ。  ならば、別に無理に余計な事に加担する必要はないのかと納得してしつつ、今度は自身の状況を把握しないとならないと考える。  閻魔は確かに方術を使えるとは、言っていたが、果たしてどうであろうか? 今の視線はやや低い。それは、歳が若くなったのもあり、背が少し縮んだのは理解する。  いや、と首を振りながら確認するが、若干身体が違う気もしたが、問題は生前のままのチカラが使えないと意味がない。
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