第四章 求め続けた末に

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「本当に今さっき目を覚ましてだな」    言いつつ、手を素早く引っ込める。それに合わせて、エマが素早く上体を起こす。 「――妾の体に触れる許可は、出しておらんッ!」  枕を掴むと、おもいっきり連打が開始される。何度も何度も、バフッ、バフッと振り下ろされるが、その威力は、たかが知れているので、腕を前にして防ぎ凌ぐ。  以前そうであったが、何分も経たずに力尽きて、肩で息をする。 「はぁはぁ……」 「……落ち着いたか?」 「こ、こんなもんで……ゆ、許されると……お、思うな」 「そう……なのか?」 「本当は、そう言いたいが……妾が勝手に潜り込んだ……のも……ある。次に破廉恥な事をしたら――せ、責任問題じゃぞッ?!」  再び、勢い取り戻そうとするので、十分気を付けると述べたところで、漸く平常に戻ってくれて一安心出来た。  ただ、それにしても……何故エマは、ベッドに潜ったのであろうか。  それ以上に……方術師として、恥じない程の能力は得たはず。寝ていたと言えど、身近に寄る気配に反応し、目が覚めるはずなのだ。実際、暁の修行にも、無防備な状況から意識を覚ます特訓をさせられた。  それが二日連続で、身の傍に近寄られたとなれば、それは俺の問題なのか? または、エマが特別なチカラを使っているのか?  流石は閻魔執行官かと、納得しておく事にし、朝の身支度を開始する。  一通り準備が出来き、朝食も終えると、リビングでシルビナが治癒をしようと移動する前に、シトが呼び止める。  今日のお昼には、勇死病に挑む手筈となっており、失敗した際のリスクを話したのだ。その表情は険しく、危険性を少しでも軽減しようとティエラも傍で励ましの言葉をかける。  また、呪い解除儀式中、いざの事態も考慮し、今朝の治療はティエラだけで様子を見るとなり、三人の治癒は、ティエラが施す事にした。  エマに「解呪出来そうなのかえ?」と軽く言われたが、シトの考えでは、絶対は無い。天の邪鬼な考えかも知れないが、絶対と言う単語が好きではない。  世の中とは、何が起きるかなんてわからない。現に自身は、死んだはずなのに、別の世界で生きて方術式を使っている。これだってあり得ない可能性の話だ。  パーセントで試算すれば、一般的に天文学的な数字が出るだろう。それでも、“絶対”……とは限らないのと同じ。
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