第四章 求め続けた末に

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 シトがやってみないと何とも言えないとの回答に、満足そうに頷き、そうじゃろうな。と、納得したエマは、楽しみにしながら、窓から外を眺める。  雪はいつしか、深々と降り続き、足が埋まる程に積もっていた。今は雪は止んだが、寒さに、変化はない。まだまだ冷えそうなこの天気に、何か物足りない感じを思う。  そんな時間は、瞬く間に過ぎ去っていく。仕事を休みにしたシルビナとリナリーの二人は家事を終わらせ、ティエラは黄華と何やら話をしながら確認し合う。  思った以上に、黄華をティエラは気に入ってくれた様に感じる。黄華のきびきびし性格は、どちらかと言うと秘書に近い。巫女をサポートとする上で、この上ない相性なはず。ティエラと契約し護衛する限り、黄華はティエラのチカラを提供されて活動可能だ。  何より、式神に歳は関係ない。年数経とうが老いる事がないので、巫女に長く仕える事も出来る。  などと考えていれば、お昼の頃……火下がりの刻を知らせる鐘が鳴り響く。警告の鐘とは違い、綺麗な音色が雪景色の外から届き…… 「……さて、霊符の完成を確認してきます」  部屋に置いて来た霊符を取りに向かう。机の上に置かれた札は、青い光を帯びており、手に触れた瞬間、それは消えた。  無事に完成をしたのを確認したが、それよりも、その色合いで最後の一矢、ディアボロス戦で使った切り札の方術を思い出した。  ……俺のオリジナル術式。最初で最後の術式だったな。  手にする霊符を目にしつつ、終わった事だと言い聞かせ、皆が待つリビングへと戻っていく。  各自ベッドで待って良いと伝えたはずなの、ソファーには、クロード、ライガ、フィーリの姿もあるのだ。  大きな期待を全員の視線から伝わる中、一人ずつしか解呪術式は出来ないし、何かあれば責任は取れないと再度忠告を付け加える。  すると、最初にやって欲しいと名乗り出たのは、クロードだ。  自身の身体は何があっても問題ないし、恨みもしない。好きなように身体を使って欲しいと願い出た。  それ程の覚悟なら、此方も少しは気が楽になる……なんて事は、ない。  やれる事をやる。出来るなら行うまで。だから、クロードの意思に答える様にシトは、彼の前に出ると…… 「では、神爪司斗が、呪詛解術式を受け持ちます」  瞳に宿すのは、決意の力。霊符を片手に気持ちを整えた。
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