第四章 求め続けた末に

72/74
前へ
/372ページ
次へ
 全員の顔色は、決して良いとは言い切れないが、これで治癒は完了した。一つ、大きく息を吐ききると……  誰より先にシトの前に出たのは、シルビナであった。 「――本当に、本当に……ありがとうございます。言葉では足りない程に、感謝しております」  瞳に溢れる涙が、頭を下げると同時に床へ落ちていく。そんな彼女を前にシトは、口を開く。 「方術師の契約、我が成した事象こそが終演の証也」  声が耳に届くシルビナが顔を上げると、シトは印を組んで優しい眼差しを送っていたのだ。 「うむ、これにて一件落着であるな」 「まあ、ふざけた呪いは終わらせたし、ティエラさんの護衛召喚、札も手に入ったので、終わりだな」  エマに言われて、確認する。やりたい事は、一通り済ませた。これでも呪いを……と、此処で「ん?」と嫌な事を思う。それを考えると、面倒になりそうなので、シトは、胸元に手を突っ込み、護符を取り出した。  神通力を整え、護符へ言霊詠唱にてチカラを付与させると、クロード達に渡す。 「呪詛は、またかかる可能性がある。それは、呪詛避けの札ですので、念の為、持っていて下さい」  クロードが不思議そうに受け取りながら、貰っても良いのかと確認すれば、シトは頷き答えた。 「また呪詛にかかれば、厄介です。俺も何度もやりたいくない。それと、代わりにと言ってはなんですが、体力回復したら他の巫女を救いに動いてくれませんか?」  えっ? とした表情浮かべるのは、この場に居る全員。その中でも、エマの反応は違う。テンション高めにしながら声にする。 「――うむ! お前様、ついに世界を救うと決めおったか! この者達をお供につけて行けば……」 「おい、誰がお供にすると言ってる? 俺は、この人達に世界を救って欲しいと思っただけだ」 「……はぁ? お前様? 何を言ってるのじゃ?」 「だから、そのままだ。クロードさん達は、まだ巫女を救う意思はありますか?」  その言葉に、クロードがシルビナ達を見た。視線で確認する様に見渡し終わると、瞳がシトへ。 「万全になれば、再びギルドにて活動再開したいと思ってます」 「なら、体力戻り次第で構いません。それも焦る事なく、世界が困らない程度にお願いします」  なんとも力の抜けた言い方を前に、リナリーがついつい笑い出す。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

311人が本棚に入れています
本棚に追加