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「……俺は魔法使いでも陰陽師でも無く、方術師です」
「ほ、方術師? 法師とは違うのですか??」
「……んん、まあ、方術師なんてマイナーな職種だから仕方ないな」
自分で言ってて、そう思える。
「法師でも陰陽師でもない……お札使わないで術発動させましたが、あれが方術ですか?」
「陰陽師の陰陽五行思想は、その術を発現するに当たり、神通力を増幅する呪法字体にてそのチカラを札に通し、媒体とするのに対して、方術とは別名では仙術とも呼ぶものです」
「――せ、仙術?! で、では、シト様は生前は仙人様でしたか?!」
水色の瞳が見開き、普段でも大きめの瞳全体で驚きを表現するが、落ち着いたまま返す。
「仙人まで行けば不老不死。仙人が使えば仙術であって、人の身が使う場合は、方術と呼ばれるんですよ」
「……そうなのですね」
閻も言われて納得。仙人は不老不死であって、ほんの一握りしか辿り着けない境地であれば、そんな人が異世界等に来るものか。
理解した閻からディーンズウルフと呼ばれた魔物を見ると、何やら変化があるのに気づいた。身体が光に包まれると、一瞬にして消えた後に、小さな青い宝石の様なものが落ちていた。
「……あれはなんですか?」
疑問に思いつつ歩み近付き手にする。とても軽く、見ていて綺麗だ。
「これは魔結石と呼ばれる魔物コアです。この世界の魔物は生命活動を終えると残るコアが形と変わります。これをお金で引き取る施設があるので、魔物を倒して生計を立てる人々もおります」
「魔物を倒すと宝石が出るとは……妖魔を倒していた時とはえらい違いです」
手にした宝石を眺めながら軽く言ったが、そこは「そんなに簡単な事ではありません」と力強く否定される。何せ、魔物は普通の人々では太刀打ち出来ない。
この世界の住人にとっては脅威で、大抵は街道を使うにも腕の立つ者が居ないと話にならない。道中命を落とす者も数知れないのだと言う。
「その話からすると、魔物自体がこの世界では困る存在なのですね?」
「はい。魔物を倒せると言う事は、この世界では優秀な人材とされます」
「優秀……ですか」
魔法を使える世界にて優秀と言われても、穏便に人生を過ごしたい身としては微妙な感じである。
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