第四章 求め続けた末に

74/74
前へ
/372ページ
次へ
 あまりの変化を前にして、皆の動揺が見て取れるが、リナリーは閻の前に行くと「おかえりなさい」とシト同様に、気兼ねなく挨拶をした。  それと、同時に焔鷲も仕事を終えた様に消えていたのに気付くが、まあ、いいかと思えば、冷静に閻が口を開く。 「シト様、現状把握したいので、状況説明願います」  乱れる事なく、淡々とこなす彼女は、本当に色々優秀だ。見慣れない部屋、見慣れないメンバーを前にしても動じる事がない。ならば、説明しない訳には、いかない。  それに、シルビナ達も驚きを隠せない表情。ちょっとややこしいが、リナリー達に転生者である経緯を伏せつつ、説明しないとならい。そんな配慮をしながら、説明することになった。 「……なるほど。納得致しました」  ソファーに背筋伸ばし座る閻が把握したところで、シトは、紅茶を喉に流し込む。 「クロード・ルピリアス、シルビナ・ニディアス、ランガ・グルンガイド、フィーリ・ナリガガ……ギルド登録団名“純翼(じゅんよく)の旅団”の方々でしたか」 「純翼の旅団??」  シトの復唱に、リナリーが「えっ?」と反応する。 「リナリーさん、知ってるんですか?」 「二年前……そうか。そうだよね。確かに、ギルド登録者で、王宮騎士団にも匹敵する冒険者達が居るって話……もしかして、それって……」  思い出した記憶を元に、考え直す。確かに聞いた。ギルドの高ランク魔物討伐を難なくこなす者達の集団。それが純翼の旅団であると。確かに、ここ最近話が出なかった。 「久しい名前出して頂いてありがとうございます。私達のギルド名ですね」   シルビナが、クスッ。を微笑む。 「流石、シト様です。閻が不在時にまた、方術式を人々の為にお使い頂き、閻は誇らしいです」  堂々とした言い方に、皆の前で言われると、どうにも歯痒いが、此処は、素直に黙って受け入れる事にした。  それにしても、エマも戻り、漸く平和が訪れので、そろそろ宿屋に戻ろうかと、口にしようとしたが……  ――ドンドン。何かが叩かれた音が響き届く。  なんだろう? それは、何度も繰り返し鳴る。どうやら、玄関の扉が叩かれ、来客を示していた。  シルビナが「私がいきます」と足早に出掛け行く。この後、シトは早く宿屋に戻るべきだったと思わされる事になるとは、この時点で知るよしは、無かった。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

311人が本棚に入れています
本棚に追加