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冬季使者がディリース王国に訪れたお陰で、城下街中は、白い雪景色へと変化を遂げていた。足がずっぽりと隠れる程に積もり、息をすれば白くなるので、本当に真冬が訪れた。
幾ら太陽が日差しを照らしても、つい数日前の陽気な天候ではなく、こんな状況が普通に認知されるレボヌールって言う世界は、本当におかしい。シトは、馬車に乗りながらそう思う。
街の中では、雪掻きが行われているので、この辺は、前世と変わらない。火の属性魔法で溶かしたりしないのかと、馬車の窓を眺めていれば、ティエラが申し訳なさそうに喋る。
「カヅメ様、本当にご迷惑お掛けします」
「ああ、別に大丈夫です。この後は、別にやる事なかったですし」
「ですが、神殿までお越し頂く事になってしまいました」
「仕方ないです。それに、俺にも用事あったなら、結局遅かれ早かれだったでしょうし」
窓を眺め、ぼそり。流れる映る景色を前に、少し前の事を思い出す。
屋敷でシルビナが迎えに出た相手とは、王国騎士団の一人、ソールド隊長であったのだ。普通、騎士団隊長クラスがわざわざ訪れる事は、ない。
それでも、ソールドが此処に赴いたのは、ティエラに重要な言伝があり、国王直々の命令でもあったのだ。シト達の居場所は、シト専用の馬車である操縦者が、定期的に居場所を報告している。何せ、四大巫女だ。何かあれば、ディリース王国の国権に関わる。
ただでさせ、封印された汚点は、二度と起こしてはならないのだ。
そして、土の巫女宛に来訪者が訪れ、謁見の要望が届き、その事をソールドが伝えに来たのだが、相手は冬季使者である。
ティエラは、それを聞かされると、まるで分かっていたように、承知しました。と、受け入れたと思えば、続けてソールドが口にしたのは、シトの出席。えっ? と露骨に顔に出したが、冬季使者の謁見希望は、どうやらシトにもあるそうだ。
よし、面倒はもういい。故に、お断りの言葉を口にした。
案外その言葉に、それなら仕方ないです。ソールドが引き下がったのは、喜ばしかったのだが、閻がボソッ。と言った事で、考えが変わる。
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