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結局、冬季使者に会って、早く帰って貰うのが利口だと結論付け、大人しく馬車に揺られていたのだ。
「それにしても、俺と謁見したいと言われてもな。まさか、厄介ごとじゃないよな」
思わず言葉にしてしまう。すると、冷静に閻が答えた。
「厄介とは、人により捉え方が変わります。シト様の厄介は存じませんが、お好きにすれば良いかと思います」
あっさりとした口調。確かにそうかもしれないが、相手は、来ただけで寒さを運ぶ存在だ。回答一つで長期滞在となれば、この国に関わる問題へと直結しそう。
それにティエラの反応を見る限り、冬季使者と面識ありそうだ。
「……好きにね。まずは話を聞かないとだな。ちなみに、俺は知りませんが、どんな人なんですか?」
その問い、最初に閻が答えた。
「アルタート大陸のコーディアル霊山に住まう者で、冷静沈着、合理的な方です。民からも支持を受けており、名実共に使者を名乗るに相応しい方です」
「アルタート大陸……か」
閻の説明で、既に分からない単語がちらほら。四大陸があり、此処がレイドラン大陸なのは覚えた。そうなれば、残り三つのどれかだ。続く様に、ティエラが話を始める。
「冬季使者様は、定期的に、私達の元へ訪れておりましたが、不在の間はどうなされておりましたか?」
黄色の瞳が、リナリーに向けられる。
「残念なお話ですが、ティエラ様が襲われ、後に各四大巫女も襲われてしまい、各使者様が大陸訪問に動きも不規則となり、天候は安定しないものとなりました」
「……そうでしたか。それであれば、私への謁見は、冬季使者様にとっても、重要となりますね」
「恐らくはそうかと思います」
二人の真剣な眼差しを見て、シトは軽い気持ちで聞き流す。
「……黄華も居るし、ティエラさんが襲われる心配は、もう少ないでしょう」
「勿論です、シト主。今のコウは、他の五龍達にも負ける事はないでしょう」
自信含む口調。実際、土巫女と契約を結ぶ事で、黄華の基礎能力は、飛躍的に向上したのは、感じが取れる。
これ程のチカラを有していれば、生前のディアボロス戦で、アタッカーを任せられたかも知れない。
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