第二章 異世界と自分の価値観

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        ▽  湖を中心にし栄える王都ディリースへ到着したのは、あの位置から徒歩で言えば数時間は必要とした。しかしながら、閻が召喚魔法と呼ばれるチカラを使い、馬を喚び出してくれたお陰で思った以上に早く到着した。  流石は王都と呼ばれるだけあって、高く頑丈な城壁に囲まれ、入口には門番が配属されている。勿論、怪しい者が入らないか確認する為であるが……  明らかにこの服装は怪しいもと思われる。和服姿の若い男女が来た。それだけで、門番に止められない訳がない。 「――待たれよ。そこ旅人よ……見た目からするに、東の大陸の者か?」  兵士の声には緊迫と疑い混じるものがある。何かあれば、腰にある剣を抜きかねない気配に、やれやれとする。 「はい。わたし達は遠い東の大陸にある日出国(ひでぐに)から流離(さすら)いの旅をしております」  そこは慣れた感じに、やんわり話始める閻こそ、余裕が見え、まるで何ヵ国も旅慣れした回答。シトは余計な事を言うと拗れそうなので黙りを決める。 「日出国か、確かにその服装からすれば妥当な回答だな。我が国に訪れた理由は旅行観光か?」 「そうです。遠路長旅し、大地の恵みの加護に祝福された王都ディリースをこの目にて収めたく参りましたが、王都では何か問題が起きているのでしょうか?」 「うむ、旅路の最中では分かりもしないか。近日、我が王の聖誕際が行われる予定だ。故に、国への来訪者が多く、怪しい者の入国を防ぐ為、確認していたのだ」 「そうでしたか。それでは、身分を示せる物が必要ですね。……でしたら、これではどうでしょうか??」  取り出したのは、黒色に炎が描かれた小さなペンダント。それを見せると、兵士は目の色を染める変えた。 「――それは、四大巫女が認めし調和の証! まさか、あなたが……これはとんだ御無礼を働きました!」  一変した態度は、敬意が含まれ、声も高々となった兵士の敬礼。見ている此方も身が引き締まりそうだ。 「いいえ、どうか気になさらないで下さい。一応、本日は此方にある宿を取る予定でしたが、どちらの方に御座いますか?」  質問に対して、ハキハキと宿を在りかを教えてくれるその姿は、終始まで別物であった。閻は訊ける事が追われば、お礼を述べてから門を潜り抜け、城下町へと歩み進む。
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