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城下町とは言い方一つ。王都ディリースは、シトが知っていた城下町とは違っている程に広大であり、その舗装された道や建物が美麗と率直に思え、目が丸くなった。街並みは煉瓦を中心とした中世の西洋を彷彿とさせ、周りを見渡すと、馬車が主なのか、広い道を往来している。
人々を見れば様々。町人のシンプルな布生地の服装から、商人を思わせる服装の男性、建物から花を片手に売る娘、親子連れやら……と此処でシトが気付く。
「……あれは……人間じゃない??」
長い髪色と同じ白い兎耳を生やすスタイルの良き女性。顔は完全に人間で美人なのだが、青いワンピースの袖から出ている腕には、同じく白い体毛が生えているのだ。
一瞬、妖魔かと考えてみたが、あんな妖怪見たことも無い。しかも、王都と呼ばれる場所を堂々と歩くとなれば、この世界ではなんら問題ではないが分かったが……
「ハールバニー族の女性です。シト様は……ああ、言う……女性がお好みでしょうか?」
「……なぜ、そんなにモジモジしているんですか?」
「……いえ、美女が多い種族ですので……その、一目惚れしたのかと……」
「……閻さん? 俺は此方に来てまだ数時間です。あんなファンタジーな住人見たら、まずは理解したいですが」
「そ、そうですか。では、僭越ながらこの奴隷の閻がご説明させて頂きます」
「……だから、奴隷はやめて下さい」
なんて言えど、彼女には関係ないらしい。この魔法世界の住人は、人間種族の他に多数の種族が住んでいるそうだ。獣人種族と部類されるのがハールバニーであり、他にも亜人種族と呼ばれる者もいるそうで、歩いているメンバーを見れば納得した。
蜥蜴の人型や鳥の腕を持つ人等を普通に歩いていても、周りの人々は騒ぎの一つも起きないのだ。つまり、此処では人間以外の種類が進化し、共存しているようなのだ。
「……魔法世界なんて言ってたから、人間が魔法使うだけの世界かと思っていましたよ」
「閻魔様はその辺しっかりご説明しておりませんでしたか?」
「思い出せるのは、勝手ホイホイ話進めて、強制的に送り届けただけ……かな」
思い出し、苦笑する。お奨めしていたが、こんなにも個性豊かな世界だったとなれば、知識無き者が急に住むには問題だらけでは無いかと、溜め息を吐いてしまった。
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