第一章 別れる世界

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        ∇  意識は失い、何かも分からなくなったはず。確かに自分が死んだと実感出来る不思議な状態が今と言える。何故なら、身体に刻まれた先程の痛みが瞬時に癒える訳がない。  そんな魔法の様に、人間は都合は良くないのだ。だからこそ、“さっき”の“今”で肢体が満足に動かせる都合が説明つかないのだ。  それでいて、非常に疑問も抱くのが今の現状である。身体の痛みが無く、姿も先程のまま制服姿であるのだが、どうにも現在居る場所が良く解らない。  周りは暗闇に覆われ、闇一色。無限の黒に包まれているかと思えば、自分の姿が認識されている。驚くべきは、周りの闇と制服の黒がしっかり分別出来ているのだ。 「……此処は……地獄か?」  右も左同じ景色であれば、動く事も出来ない。空気が非常にひんやりしており、寒気も覚えるこの感覚は、現世には無い独特なもの。 「うむ、此処は地獄ではない」  突如聞こえた中性的な声だが、微動さしない。寧ろ、待ちわびていたかの様に続ける。 「そうか。なら、俺は何処へ行くのだ?」 「……お前……随分冷静だな」 「そうか? こんなもん普通だ」  冷静か? それとも声の主は恐怖を与えたいのであろうか? どちらにせよ、退魔の職種を縄張りとし、人を脅す事を得意とする妖魔相手に過ごした経験からすれば、この現状で乱れを起こす事には繋がらない。  だからであろうか。声の主は何か不機嫌そうである。 「何故……驚かない。良し、ならばこれより開廷する!」  その言葉が合図となり、闇に変化が起きた。目の前に突如現れたのは、裁判所と呼ぶに相応しい壇上。続いて周りが一斉に炎に囲まれ、炎々しい熱気と共に辺りを明るくさせる。 「――くっ、派手な演出だな」  囲まれた炎から浮かび上がる着物姿の女性は、熱さにものともせず、左右に二人ずつ居るのが、完全に知っている日常ではない。 「クククッ、どうやら今の立場を理解しおったな?」  楽しげに語るその主は、壇上より聞こえ、目を凝らして見れば、何も無い空間がゆらゆらと歪みを見せた刹那、その本人が現れたが、意外過ぎて思わず瞬きしながら、確認していた。
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