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陰陽師だって数限られた職種。日常に生きる人々に知らずに暗躍する闇の職種であり、表に出ない者達の総称とも言える。それでも確実に妖魔に立ち向かい、人々の日常を護る大切な退魔師である。
それとは別に、シトが名乗る方術師こそ、普通の退魔師が語れる肩書きではない。それなのに、この男はそれを、さらっと言った事がにわかに信じられないのだ。
「そんなに此方を見られてもな……他に何か問題でもあるのか?」
「いや、珍しい者が来おったもんだと思ったのだ。さて……ほう、中々の戦歴功績ではないか」
「……」
「伊達に方術師とは名乗っておらんな。これならば、胸を張っても……ん?」
「……?」
閻魔帳を目線で追うが、その最後の戦歴に対して目を疑い、ついつい声にする。しかしながら、閻魔帳には嘘は記載されないのであれば、これは事実だ。だからこそ……確認するしかない。
「シトよ。……お前の最後倒した相手なのだが……相手はわかっていたのか?」
今まで反応すらなかったのだが、その言葉に、ピクリッ、と視線が鋭くなる。
「ディアボロス……俺が倒すべき相手であった」
「……なるほどな。お前両親や親友に手をかけた悪魔か……それを仇討ちにお前も死んだか」
「……そうだ。もう、良いだろう? 俺は仇を討てて満足だ。どんな判決でも構わないので、裁いてくれ」
「まてまて、シトの功績は素晴らしいものなのじゃ。まさか、初めての裁きでこの様な逸材に会えるとは、妾は運が良いのう~」
「初めて……? お前閻魔大王じゃないのか?」
閻魔大王と言われれば、死者の魂を裁判して死後の行く末を案内する者が有名。そして、昔ながら死後の導く者として、古代から居る思われる。一説では、世界で初めて死んだ人間が閻魔になったとすら言われる程だ。
「フハハハハハッ! 出おった! 人の思い込みがのう~」
小馬鹿にした笑いが辺りに谺する。それでも、シトは微動さもせずに見てはいるが、少し不満そうな雰囲気を出していた。
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