【春】2.無知のオメガ

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「あの……僕は、どうしてここにいるのでしょうか?」 「お前は危険な状況にあると判断し保護を行った。ここは我々、保護協会が管理する病院だ」 「保護って――」  言い掛けて、倉庫での出来事を思い出す。理事長との性行為を彼らに見られているのだ。彼らは聖が襲われていると判断し、保護を行ったのではないだろうか。だとするなら、あれは同意の上での行為だったのだと誤解を解かなければ。  だが聖よりも先に、トラが動いた。それも予想外の言葉を混ぜて。 「理由はね、あんたがオメガだからだよ」  オメガ。倉庫でも聞いた言葉だ。彼らはさも常識のようにオメガだと言うのだが、肝心の聖はというと、この単語を聞くのは今日が初めてで、それが何を示しているのかさえ見当がつかない。 「人違いではないでしょうか」 「いいや。お前はオメガだ。間違いなく」  はっきりと、リュウが否定する。
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