【春】2.無知のオメガ

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「心当たりがないか? 例えば――今は、自由に身体を動かせるだろ?」 「身体を……あ!」  言われてようやく気づく。この環境の変化にすっかり忘れていたが、聖は発情期に入っていたのだ。あの身を捩るほどの熱を、今は感じない。 「垂れ流しはマズいからね、オレが打った注射は緊急抑制剤。あんたの発情を抑える薬なんだよ」 「発情はオメガの特徴だが……お前は、自分の身体のことをよくわかっていなかったのか?」  リュウに問いただされ、聖は俯く。  自分の体が興奮状態に陥ることはよくわかっていたが、オメガについては知らず、それが自分だと言われてもピンと来ないのだ。  聖の様子を眺めていたトラは大きくため息を吐いた。 「……もしかしたら、この子は本当に知らないかもしれない。適切な教育を受けていないのかも」 「ありえるな。在籍生徒がオメガとわかった場合は我々に報告する義務があるが、それを怠る学園だ。こいつを都合のいい性奴隷として扱うために、わざと教えなかったんだろう」  二人の会話は通常の声量で交わされていたため、嫌でも聞こえてしまう。  リュウもトラも、聖に呆れているのだ。居心地の悪さを感じて、ベッドのシーツを握りしめた。
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