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聖は悲しげに顔を歪ませた後、腹を抱えて笑うトラを止めるべく、結論を出した。
「とにかく僕は被害者じゃないです。だから学園に帰してください」
「駄目だ」
すぐさまリュウが遮った。
「知識のないお前を野放しにしておけない。オメガ保護特区へ移送する」
「僕の居場所は学園にあるんです。みんなが僕を必要としてくれるんです」
「それはお前がオメガだからだ。戻ったとしても慰み者として扱われるだけだぞ」
「構いません。僕を求めてくれるのは学園だけなんです。僕を必要としてくれる人たちのところに、帰ります」
一歩も引かず、正面からぶつかり合った後、二人とも黙り込んだ。
特にリュウは、じいとまっすぐに聖を見つめていた。その視線は射抜かれそうなほど強く、奥底を見破ろうとする鋭いものだ。見定められているのが悔しく聖も睨み返すが、リュウの顔は分厚い皮で覆ったのかと思うほど微動だにせず、真意は読みとれない。
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