【春】2.無知のオメガ

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 よくある銀色のシートだが、端には『オメガ型抑制剤』と書いている。何粒もの薄桃色の糖衣錠が詰まっていて、説明がなければ風邪薬と間違えてしまっただろう。あれほどの強い欲情を頼りない小粒で抑えきれるものだろうか。 「今回使った注射タイプは発情期にしか使えない緊急のものなんだ。副作用も強い。だから次からは錠剤で」 「それを、僕が飲むんですか?」 「そうだね――と言いたいところだけど、これは汎用品なんだ。あんたの発情は特殊だから、専用の抑制剤を作らないといけない。眠っている間にデータを取らせてもらったから、すぐに出来ると思うけど」  説明を受けても、完全に信じることはできない。本当に自分なのだろうかと半信半疑のまま、話は進んでいく。
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