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三ヶ月に一度。聖の身に生じる変化。
その期間になれば、全身が熱くなって敏感になる。指がほんの少し触れただけで頭の芯が蕩けて動けなくなるのだ。少しで体を動かせば、ささいな服の摩擦に反応し、己の肌に潜んでいた欲が起き上がってしまう。
わずかな刺激で反応してしまう癖に、この時期は酷く欲張りだ。膨れ上がった己を宥めるべく、精を放とうが鎮まることがない。腰をくねらせ次を求め、例え理性が切れようが、意識を失うまで続く。なんともやっかいな時期だ。
誰が言いだしたか、これを発情期と名付けたのは的を得ていると、つくづく実感する。本能に従う獣のように、快楽を求めて止まないのだから。
人並みな生活さえすることが出来ないこの発情期を、聖は嫌っていなかった。
十七歳の夏。去年の夏に初めて発情期を迎えてから、聖の学園生活は一変したのだ。
発情期に入ると、教室の隅で埃をかぶっていそうな影の薄い存在が、どういう訳か、皆から求められる。クラスメイト、下級生、挙げ句の果てには教師まで。すれ違いざまに腕を捕まれ、人気のない廊下で犯されたこともあった。
それほどのことをされても、聖はこの発情期が嫌いではなかった。
相手から求められている。それが一方的な性行為であっても、相手が必要としてくれているのだと思えば快楽に変わる。
いつしか聖の噂は学園中に広まり、発情期が近づくたびに性行為の予約が入るようになった。
外部の人間から見れば、聖を指さして『爛れている』と評するだろう。それでも、聖は手帳に名前を刻むことをやめない。
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