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身体の内も、外も。どれだけ汚されようが、爛れた性交は終わらない。午前・午後・夜と区切った手帳は正しく、午前が終われば入れ替わりに次の相手がやってくる。
行為に終わりがくるとすれば、発情期が鎮まる時ぐらいで――だから、これを遮るものはないと思っていたのだ。
夜。倉庫の扉が開き、入ってきたのはこの学園の理事長だった。
「またせたね。今日もこんなに汚れて、とても可愛らしいよ」
汗と体液で汚れた身体を一撫でし、理事長は聖の前に座る。
「僕を、求めてくれますか?」
「もちろん。朝までたっぷり求めてあげるからね」
荒い息をこぼしながら、理事長のスラックスに手を伸ばすと、ざらざらとした布地の向こうに、身を起こしかけているものがいた。触れただけでびくりと跳ねるそれは、聖を求めて、聖の指先に喜んでいるのだ。
身体が熱い。先ほどまで抱かれていた熱が、まだ足りないと憤っていている。我慢できずスラックス越しに舌を這わせれば、唾液が布地に染み込んで、隠されているそれの形を浮き立たせた。
理事長の欲を、もっと、目覚めさせたい。獣になり、狂って、求められたい。数度ほど舌を這わせ、その膨張を感じた時だった――
扉の開く音がして、薄暗い倉庫に月の光が差し込む。
この時間、理事長以外に予約した者はいない。誰も来るはずがないというのに。驚き目を丸くした聖が見たのは、倉庫の入り口で月を背負った影が二つ。
「うわー、噂通り理事長が生徒とセックスしてるなんて! ははっ、面白くて笑っちゃう」
「……こんな最低の現場で喜んでいるなんて、お前は頭がおかしいのか」
蕩けていたはずの思考が、ほんの一瞬、時間を止めた。薄暗い中で月に照らされた二人の姿が、あまりにも美しすぎたのだ。はっきりと顔や姿が見えないのに、どうしてか聖はそれが綺麗なものだとわかってしまった。
頭の奥が警鐘を鳴らしている。これは危険なものだ。月よりも美しいあの存在は、自分を狂わせるだろう。それでも、目を奪われて動くことさえできない。
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