●【春】5.嘘の代償

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 相手の精を受け止めた時の独特の違和感。液体が腹に溜まった感覚に、ようやく事が終わったのだと息を吐く。  だが――まだ異物は、体内にしっかりと残っていた。 「……ああ、これで、丁度いいな」  リュウの言葉は冷たく、聖に絶望を与えた。  先ほどまでの激しさはないものの、ゆるゆると繰り返される輸送。精液が潤滑油となったため痛みはなく、まだ終わらないとばかりな肌のぶつかる音がする。 「な、にを……」 「言っただろ。これがアルファのセックスだ」  終わりだと、言ってほしい。こんな荒々しいものを、何度もぶつけられては――絶句する聖の耳元に、リュウの囁きが落ちる。 「お前が壊れるまで、犯し続けてやる」  そして再び、聖の身体を抱こうとした時だった。正面にいたはずのトラが、後ろに回っていた。 「ちょっと。オレもお楽しみしたいんだけど」 「……ハァ。なんでお前がいるんだよ」  ずるり、と引き抜かれていく。トラの威圧感に屈したらしく、リュウが離れていった。
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