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立ち入る許可も取らず、二人はずかずかと進入した。室内に入ってくると、その顔がうっすらと見える。顔つきや服装から察するに学生ではない、恐らく年上だ。
聖とは逆に、理事長は怯えていた。立ち上がって後退りをし、今すぐにもここから逃げ出しそうだったが、侵入者たちがそれを制した。
「理事長。お前の罪は明らかだ。証拠も押さえている。我々カネシマグループから逃げられると思うなよ?」
その一言で、理事長の心が折れた。どさ、と地面に膝のつく音が聞こえる。
「すごいね。誰とでもヤっちゃう淫乱生徒を囲う学園。オレも高校生に戻りたーい」
「……トラ。お前は黙ってろ」
「あーあ、リュウは真面目すぎてつまらないね」
リュウと呼ばれていた男はため息を吐いて会話を打ち切ると、聖の前で膝をついた。
聖の顎を軽く持ち上げてまじまじと顔を眺める。
「やはり、な」
瞳に色はない。確認しているだけの無機質なものだとわかっているのに、発情期の熱に侵された聖はそれすらも過敏に受け止めてしまう。ただ視線が重なるだけで、瞳の奥、感情、呼吸の全てを掌握された気がした。
確認を終えると、素っ気なく男は離れた。しかしすぐさま腕を引き、今度は聖を押さえ込む。
不意をつかれたこともあり、がっしりとした体格から逃れられず、叫び声をあげることも出来なかった。
「こいつは野良オメガだ。それも発情期中の。大当たりだな――トラ、抑制剤を出してくれ」
「オ、オメガ……?」
掠れた声に返答はなく、冷たい指先が聖のうなじをなぞる。
トラと呼ばれたもう一人の男が注射器を手にして聖に寄った。
「ちくっとするけど大丈夫だよ」
「ひッ……注射、どうして……な、んで」
「打て」
聖の首筋に針が刺さる。普段ならかすかな痛みのそれでさえ、感覚が敏感になっている今では興奮を増すものでしかない。
細い注射針から注ぎ込まれる薬によって、陸に打ち上げられた魚のようにびくびくと身体が跳ねてしまう。快楽に似ているようでいて異なり、聖の意識にこびり付いた欲望までしっかりと染み込んでいく。
荒れ狂う嵐が宥められ、力を失い――注射器がその役目を終えると共に、聖は意識を失った。
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