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思い出す。
黒々とし、無数の星を浮かべたような聖の瞳を。
それは純黒の鏡だ。しかし何も映さず、覗きこんでも何も返ってこない、果てのない宇宙や底なし沼に似た無機質。
色を教えたら――彼が彩色を手に入れたいと願ったら、あの瞳はどのように煌めいて誘うのだろう。
「そうだね……不思議な子だ」
求められることばかりで、自ら求めようとしない。求めることが罪とばかりに諦めてしまった。
与えてばかりの聖は、甘い蜜があれば無償で身を委ねる蝶だ。狂わせ、惑わせる。何をされてもひらりひらりと舞って、罪色の羽を揺らめかせる。
「……さあ。聖ちゃんを、早く病院に連れてかないと」
そして部下に連絡を取ろうとした時、リュウがようやく動いた。
「待て」
「なに? やっと手伝ってくれる気になったのかな」
「病院には――連れていけない」
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