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「どうした。飲み過ぎか」
問う声は低くて小さい。元ハンドボール部の裕真は高校の時から成人男性のような身体付きだったがその頃から声の小さい男だった。
深く吸い込んだ空気をため息のように声を吐き出す。
「いや、別に」
「なんだ、また振られたのか」
眉を顰めると一層外国映画の俳優のようだ。
「またってなんだよ」
「このあいだまた新しい……恋人が出来たって言ってただろ」
「あーー」
心也は目を空へ泳がせる。
そんなことを言ったかもしれない。裕真には会う度にエア彼氏の話をしている。端から見たらきっと親友に見えるだろう心也と裕真だが実のところ心也の努力がそう見せているに過ぎない。
特に人恋しい性格でもなく、マメでもない彼氏持ちの裕真を家から引っ張り出すにはいもしない彼氏に振られなければならないのだ。
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