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寝苦しさに目を覚ますと、腹の上に上半身裸でパンツ一丁の美少女が乗っていた。
(……なかなかいい眺めだ)
長い黒髪が白い肩と形の良い胸に流れ落ち、へその僅か上で切り揃えられている。
俯いた白い顔はだが興奮のためか頬と目の周りだけがほんのりと朱に染まっていた。
朱金の瞳を寝ぼけ眼のまま見上げていると、ふいにその瞳が剣呑さを帯びて細められ、赤い唇がきゅっ、と片側だけ引き上げられた。
「おいおい」
細く長い指が首に回されたと思うと、ゆっくりと力が込められていく。
「殺す気か」
「……だって役立たずの引きこもりなんて生きている価値はないと思うのですよ、お兄様」
「俺に妹はいない」
「兄弟子ですから。兄も同然です。寧ろ血の繋がった兄妹よりもずっと強い絆があるものと思うのです」
淡々と口調で強い絆とやらを口にしながらよりいっそう指に力を込める少女ーーフェリル。
そろそろ本気でヤバイかも知れない。
息苦しくなってきたと、抵抗を考えたが。
フェリルの身体は見事にマウントポジションをキープしていて、俺の両手はというと(寝ている内にされたのだろう)頭の上でヒモ状の何かでしっかり拘束されているらしい。
「……けほっ。あー、ところでその……格好はなんだ?」
朝っぱらからなんで裸同然なんだと疑問を苦しい息のなか確認してみると。
「シャワーを浴びていたのですが、なんだか急にお兄様が忌々しくなってしまいましてそうすると殺したくなって仕方がなくなってしまいました」
「……なんで?」
「だってもう一年と二月ですよ?魔王討伐の旅を終えて。その間お兄様は何をなさいました?何もしてませんよね?ただただ日々自堕落に部屋に引き込もって……。私が、この私が気づかないとお思いですか?この一年で体重が八キロ以上、腹回りはベルトの穴2つ分太っていますよね?この首だって顎肉が指先に触れて気持ち悪いです。私は、耐えられないのです。私の愛するお兄様がこのままメタボに成り下がるなんて。ろくに日にも当たらず生っ白い豚に成り下がるのを目にするくらいなら、いっそまだしもマシな今の内に……。そう思うのは至極当然のことではないですか」
(俺はおまえの思考回路が気持ち悪い)
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