嫌いなアイツ

5/15
前へ
/143ページ
次へ
6畳の自室に帰って来るなり、空人はまず机に向かった。木のぬくもりが残る学習机は小学校に上がった時に祖父母がお祝いだと贈ってくれたものだ。当初は本棚が付いていたのだが、中学生になると同時にその部分を外し、ごく普通の机に変えた。 その上に一つだけ置かれたノートパソコンを開き電源を入れてから、制服を脱ぐ。ジャージに着替え終わる間にパソコンは立ち上がった。 画面には横書きの文字が並んでいた。下半分はまだ余白だが、上半分では空人の頭の中で作り上げられた主人公が、仲間と夕暮れの道で語り合っている。 1年生の秋頃に書き始めたこの小説はバスケをテーマにした青春小説で、学校のバスケ部のレベルに飽き飽きしていた5人の男子生徒が代々木公園のコートで出会い、ストリートバスケの頂点を目指していくと言うあらすじだ。 誤解から仲間割れをしたり、時に本気で殴り合ったりしながら、この数カ月で彼らの間には崩れようのない絆が出来ていた。 この先、誰か一人がそこを抜けたり、裏切るような展開になっていくのもそれはそれで面白そうだが、今はまだこの5人の絆を見届けていたい。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加