嫌いなアイツ

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まだ真っ白なページにストーリーを描いていく。主人公たちが空人の頭の中で起こすことを、わかりやすいよう、そして劇的な展開になるよう、工夫して書き起こしていく。 空人は中学3年生の時からネットに自作の小説を投稿してきた。自身のサイトを持っていたこともあれば、小説を投稿出来るサイトにそのまま書き込んだこともある。 最初は単なる趣味で書いていたため、残念ながらパスワードを忘れて、ネットと言う海の藻屑と化した小説も多いが、高校生になってからは書いた小説のすべてをきちんと保管するようになっていた。 とは言え、今書いているバスケの小説も、その前に書いていた殺し屋の小説も、そのまた前に書いていた超能力者の小説も、すべて日の目を見ることはなかった。 毎回読者は現れるのだが、多くて30人、少なければ10人にも満たず、ましてや同じ人が2回読んでいるかもしれないとなれば、実際の読者はそれよりずっと少ない数になる。 何がいけないのかはわからない。文章はそれほどひどくないはずだし、展開もそれなりに考えているつもりだ。 それでも読者は一向に増えず、今回はもしかしたらバスケと言うネタがそれほど人の興味をそそらないのかもしれないなとも考える。 ネットにアップし始めて、早半年。10人にも満たない読者では、この小説の前途はもう見えたようなものだ。 それでも空人はこの小説を途中で投げ出すことが出来なかった。 小説の主人公のことが、メンバーのことが、本当に心から好きなのだ。彼らの未来を見届けていたい。ただそれだけで空人はこの小説を書き続けている。
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