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昼のチャイムが鳴り社員食堂へ、食堂で山菜うどんとおにぎりのセットの列に並び自分の番が来たら社員証で会計する。
便利だが、給料の天引きでしかないので出来るだけ持参したいが半分諦めてる。
事務スタッフ社員のグループの机をさけ、実労働正社員が集まってる机のはしに座る。
昼飯にさぁ手をつけようとしたとき自分の前にトレイを置く野郎が現れる。
「手塚さーん、何で置いてくの?」
「何でって、君ラインじたい違うだろ」
「でも、一緒に飯食いましょって言ったでしょー」
「君、派遣だし、派遣の仲間と食べればいいだろ」
「先輩はぁ、交流はいい事だって言ってました」
「…それって北村さん?北村さんは?」
「北村先輩は深夜勤に移りましたー」
ーーー目の前の二十歳の青年は派遣会社の派遣で、数ヶ月の契約で来ている。
自動車工場のライン工だ、24時間3交代勤務ハードでキツいだけキツいのを数ヶ月過ごして歳の割に高額な報酬を得るのだ。
まぁ、本当に若いから平気なんだろうな。
同じライン工として工場じたいに正社員採用されている自分はもう27で、正直言って転職にはギリギリの年齢と、いくら若かったとは言え高校を卒業後すぐ入社した自分の経験で転職、と二の足を踏みしかし先を考えると転職を考えるそんなお年頃だ。
目の前の青年、佐伯尚は今年のGWにこっちに越してきてそのまま勤務開始し前回話を聞いた感じでは8月、お盆休み位までの契約らしい、この手の派遣は稼げる時に稼ぐあれなので契約後、また別の工場や会社に移って行くのだ。
佐伯と知り合ったのは実は一週間とちょっと前なので知り合って間もない。同僚には「なつかれたなぁ」と生ぬるい笑みをもらい正直微妙な心境だ。
しかし佐伯は若々しく素直で対人スキルが高いのか周囲とすぐに溶け込み嫌味を言われたりすることも少ない。あと顔面偏差値が高めなのにちょっとおバカなところがパートタイマーのおばちゃんがたには妙に受けているらしい。
手塚はうどんの汁をすすり、
「君は準、深夜勤はまだ無いの?」
「シフトじゃあ俺らが来た中で最後に回ってくるとか言ってましたけど…あれ?手塚さんと会えなくなる?」
「君のシフトは知らないけど僕も準、深夜勤務はあるし、かぶれば休み時間食堂で会うだろ」
「そっかー」
「あの、社内報?ですか?北村先輩がお祭りみたいのがあるって言ってて」
「お祭り…?」
「ミツダの新型車デモとかって」
「ん、あぁ」
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