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日常が非日常?
ミツダ本社は販売経営戦略の変更を決め、今までメインで販売してきたコンパクトカーやファミリーカーから方向転換。購買者層を高め年齢の独身男性、独身女性をターゲットにスタイリッシュ、ラグジュアリーを全面に押し出した、価格も高めのスポーツカーラインの新型車そして新型SUV車を今夏発売することになっている。
その2車種の社内向けデモンストレーションをやるにあたってこの工場が選ばれた話しか。
「うちの工場は面積があるし、デモ用のコースもとれるからなぁ…見たいの?でも毎回抽選で社員優先だし観戦する分普通に半休扱いされるから給料減るよ?」
「え~、え、でも手塚さんは見るの?」
「…見るよ、デモ走行ん時は今んとこみんな見てるし」
「え~、じゃあ、俺も抽選参加します!」
「あーそう、取れればいいな」
「はい!」
先に立ち食器を片付ける。
ーーー社内報だとデモ走行は6月頭か、抽選応募忘れてた。
派遣が抽選通るかねぇ?
ーーー6月頭、某日。
昼休憩チャイムが鳴り、工場事務棟入り口には人が群がっている。
「手塚さーん!」
(あっれぇ?)
「佐伯君、抽選通ったの?」
「はい!」
「シフトは?」
「先輩が代わってくれました」
(北村さん人良すぎ…)
「よぉ、手塚、佐伯。」
「堀川…」
「お疲れ様っす!」
「お前ら移動どうする?個人所有車はワゴンとかしかダメだぜ、お前らツーシータだろ、マイクロダメなら乗ってくか?」
「許可取れてるなら同乗させてくれマイクロはギチギチだろ」
「俺も、良かったらお願いします」
堀川が運転し会場に向かう車列に並ぶ。
「佐伯はスゲーな抽選よく通ったよ」
「ありがとうございます」
「ラッキーだよな。今回2車種、v-7RとTaraのデモ走行なんて」
「俺、すっげー楽しみでした。俺の借りてる寮の部屋から設置中の大型モニターとかコースとかチロッと見えるんす、抽選も通ったしワクワクしてました」
「佐伯は可愛いな、おい、手塚酔ったのか?」
「酔うか、お前らがしゃべってんだから俺が黙っててもいいだろ、まぁ、俺も楽しみにしてたよ」
工場敷地内、元々は駐車スペースをデモ走行コースに作り変えた会場はにぎわっていた。
大型モニターに並んで映る明るいレモンイエローのツーシータスポーツカーv-7Rと深いワインレッドのSUV車Taraその脇にはデモ走行のためのドライバーが立っている。
スピーカーからマイク越しの声が響く。
「ミツダ一ツ木工場の皆さんこんにちは」
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