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非日常が日常?
『さすが秀チャンそう来なくちゃ』
「日野さんあんた少し黙ってて下さいイメージダウンするだけなんで」
スピーカー越しに笑い声がする。
入江の背広を脱いだスーツ姿にネクタイでネクタイはほどかれ引き抜かれた。
シャツとスラックス、ラフな姿にインカムを着けてタイヤとサス回りのチェックが終ったTaraに乗り込む。
分割された大型モニターにTaraに乗った入江。v-7Rに乗った日野と言うドライバーが車載カメラ越しに映る。
また軽快なノリのいい音楽が流れ2台はオンロード周回コースを滑るようになめらかに走る。
かなりの速度で周回し、インカム越し入江の声が響く。
『日野さん、そろそろいきますよ。』
『はいよ~』
『3、2、1、はい!』
画面越し入江はステアリング、アクセル、ブレーキ、サイドブレーキ、クラッチを滑らかに操作して見せ、次の瞬間やけに響くスキール音と共に車を180度回転させた。
Tara、v-7Rの並びで走っていたのでTaraがコース上をバックに走りv-7Rと向かい合い本当にペアのフィギアスケートみたいに並んで走っている。
入江の声が
『日野さん今度はあんたが腕を見せる番だ』
『OK、いっくよ~3、2、1、はい!』
掛け声と同時に少し違うが入江と同じ手順で車をぶんまわす。
綺麗にTaraとv-7Rは位置を入れ替え歓声があがる。
フィナーレはv-7RがTaraの横に綺麗に並び観客前に車を並べて停める。
ーーーだれも、突っ込みを入れない。すごいものを見てしまうとそう、なるのか。
ってか、入江秀成はエンジニア!何者だよこの不必要であろうドライビングテクニック。
佐伯は興奮しきってる。近くにいた同僚の堀川はスキール音で"あー、耳イテェ、つかぜってぇタイヤとサス回りもったいねぇ"と少々所帯じみた事を言っていた。
今度こそ終わりだろう入江が簡易お立ち台に上がり挨拶の言葉を言う。
「…ここ、ミツダ一ツ木工場は車体特にエンジンパーツを作られています。皆さんの仕事一つ一つがTara、v-7Rの心臓をしいては走りを支えています。エンジニアとして皆さんに敬意と感謝を今日の社内向けデモンストレーションへの参加を楽しんで頂けたなら幸いです。それでは今回のデモ走行を終了とさせて頂きます」
「おーい、手塚、佐伯。乗ってくだろ?」
「あぁ、悪いな堀川」
「佐伯?」
佐伯は動かない。
「悪い、先に行っててすぐ追っかけるから」
「おう」
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