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「んー…分かんないけど、でも…引っ越すけど会えない距離じゃないもん。それでも悲しくて涙がでるんでしょ?それって、よっぽど朱里ちゃんにとって、たーくんは大事な存在なんじゃないかな?」
「………。」
この時、私のスマートフォンが鳴った。
「世良くん。」
>ごめん。俺が悪かった。もう一度、会って話せないかな?
私は、その画面を菜乃ちゃんに見せる。
「会ってあげたら?」
「でも、会っても何を言ったらいいのか…。」
「さっき私に言ったことを、そのまま言えば?」
「え?」
「『どうしていなくなること、もっと早く教えてくれなかったの?寂しいって気持ち察してよ!』って。」
「うーん…恥ずかしい。」
「朱里ちゃん、前に『みっともないところ見られたから恥ずかしい』って、言ってたもんね。でも、たーくんは朱里ちゃんが泣いても、みっともないなんて思わないよ。」
「………。」
「どんな理由であれ、泣いてる人をみっともないって思うような人じゃないよ。それは朱里ちゃんも知ってることでしょう?」
私の、大好きな女の子。私がとても、愛した女の子。その彼女が、微笑っている。その暖かい表情は、何よりも私の背中を押してくれる。いつだって、そうだった。
「菜乃ちゃん。私、行ってみる。」
「うん。」
「拙いかもしれないけど、言いたいこと言ってくる。」
「うん。」
すると菜乃ちゃんは、私の手を両手で優しく包んでくれた。
「応援してるよ。」
(ああ、やっぱり…。…愛おしいの。変わらないの。)
また、目から大粒の涙を零すと、菜乃ちゃんはそれを拭ってくれた。
(どうして?どうして選ばれたのは、私じゃなかったんだろう…。)
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