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頷くことができないでいると、さくらは続けた。
「じゃあ、みんなのこと想像してみたら?」
「みんなの、何を?」
「菜乃は、高二の体育祭で、桐山先生に公開告白したよね。花火大会もあんたと同様、菜乃から誘って、告白したって聞いてるよ。卒業して、桐山先生が菜乃に告白した時、少しも不安は無かったのかな?」
「………。」
「私たちの今があるのも、奏多が気持ちを言葉にしてくれたからだよね?…きっとみんな、自信なんてなかったよ。でも、逃げなかったよ。」
「………。」
「あんたは?逃げるの?」
嗚呼、もう。この悪魔様は本当に、核心をついてくる。ここまで言われて、聞かされて、逃げられるわけないじゃないか。拳を握り直したその時、スマートフォンが鳴った。
>会う。初詣に行った神社に来られる?
それは、橘さんからだった。
「なんだって?」
「俺、行ってくる。」
「ん。行ってあげて。」
「もっと、何かこう、俺の背中を押すような言葉はないのかよ。」
「何で?あんたより朱里のほうがずっと不安なのに。あんたは、朱里を傷つけるようなこと言うつもりなの?」
「多分、傷つけない…と、思う。」
「ならいいじゃない。」
本当、最後まで悪魔様だな。でも、自然とほころんだ。
「来てくれてサンキューな。行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
カランカラン♪
ねえちゃんの店の扉を開けると、ベルが鳴る。何故かその音にも「行ってらっしゃい。」と、言われた気がした。
>直ぐに行く。
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