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ほんの僅かな沈黙の後、
「ああ~っ!やっぱり可愛い!!」
ぎゅうううっと、改めて強く抱きしめられた。
「ああっ、もう!暑苦しい!」
でも腕をバタバタさせると、今度はすんなり体が離れた。三月の、まだ肌寒い風が二人の間を通り抜ける。
「帰ろうか、送ってくよ。」
「うん。」
そして、どちらからともなく私たちは手を繋いで歩いていた。
「あ、大学で彼女つくったら何するか分からないから。」
「心得ておくよ。」
「あと、いっぱいラインしてもいい?」
「いつでも大歓迎。」
「夏休み、帰ってこられる?」
「帰ってくるよ。」
「できたら花火大会行きたい。」
「おー、またみんなで行くか。」
「じゃなくて…二人で。」
「…朱里ちゃん。」
「何よ。」
「抱きしめていい?」
「嫌だ。」
肩を落とす達也くん。
「で?行ってくれるの?くれないの?」
「そんなの、行くに決まってる。」
(あ……。子供みたい。)
無邪気な、とても嬉しそうなその笑顔に、私は初めて、彼を愛おしいと思った。
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